〔歳は世紀に曾って見ぬ〕

   

   歳は世紀に曾って見ぬ

   石竹いろと湿潤と

   人は三年のひでりゆゑ

   食むべき糧もなしといふ

   

   稲かの青き槍の葉は

   多く倒れてまた起たず

   六条さては四角なる

   麦はかじろく空穂しぬ

   

   このとききみは千万の

   人の糧もてかの原に

   亜鉛のいらか丹を塗りて

   いでゆの町をなすといふ

   

   この代あらば野はもって

   千年の計をなすべきに

   徒衣ぜい食のやかららに

   賤舞の園を供すとか