八戸

   

   さやかなる夏の衣して

   ひとびとは汽車を待てども

   疾みはてしわれはさびしく

   琥珀もて客を待つめり

   

   この駅はきりぎしにして

   玻璃の窓海景を盛り

   幾条の遥けき青や

   岬にはあがる白波

   

   南なるかの野の町に

   歌ひめとなるならはしの

   かゞやける唇や頬

   われとても昨日はありにき

   

   かのひとになべてを捧げ

   かゞやかに四年を経しに

   わが胸はにわかに重く

   病葉と髪は散りにき

   

   モートルの爆音高く

   窓過ぐる黒き船あり

   ひらめきて鴎はとび交ひ

   岩波はまたしもあがる

   

   そのかみもうなゐなりし日

   こゝにして琥珀うりしを

   あゝいまはうなゐとなりて

   かのひとに行かんすべなし