〔玉蜀黍を播きやめ環にならべ〕
「玉蜀黍を播きやめ環にならべ、 開所の祭近ければ、
さんさ踊りをさらひせん。」 技手農婦らに令しけり。
野は野のかぎりめくるめく、 青きかすみのなかにして、
まひるをひとらうちをどる、 袖をかざしてうちをどる。
さあれひんがし一つらの、 うこんざくらをせなにして、
所長中佐は胸たかく、 野面はるかにのぞみゐる。
「いそぎひれふせ、ひざまづけ、 みじろがざれ。」と技手云へば、
種子やまくらんいこふらん、 ひとらかすみにうごくともなし。