雪の宿
ぬさをかざして山つ祗、 舞ふはぶらいの町の書記、
うなじはかなく瓶(へい)とるは、 峡には一のうためなり。
をさけびたけり足ぶみて、 をどりめぐれるすがたゆゑ、
老いし博士(はくし)や郡長(こおりをさ)、 やゝ凄涼のおもひなり。
月や出でにし雪青み、 をちこち犬の吠ゆるころ、
舞ひを納めてひれふしつ、 罪乞ふさまにみじろがず。
あなや否とよ立てきみと、 博士が云へばたちまちに、
けりはねあがり山つ祗、 をみなをとりて消えうせぬ。