流氷(ザエ)

   

   はんのきの高き(うれ)より、    きらゝかに氷華をおとし、

   汽車はいまやゝにたゆたひ、  北上のあしたをわたる。

   

   見はるかす段丘の雪、     なめらかに川はうねりて、

   天青石(アヅライト)まぎらふ水は、     百千の流氷(ザエ)を載せたり。

   

   あゝきみがまなざしの涯、   うら青く天盤は澄み、

   もろともにあらんと云ひし、  そのまちのけぶりは遠き。

   

   南はも大野のはてに、     ひとひらの吹雪わたりつ、

   日は白くみなそこに燃え、   うららかに氷はすべる。