悍馬〔一〕

   

   毛布の赤に()を縛び、     陀羅尼をまがふことばもて、

   

   罵りかはし牧人ら、      貴きアラヴの種馬の、

   

   息あつくしていばゆるを、   まもりかこみてもろともに、

   

   雪の火山の裾野原、      赭き柏を過ぎくれば、

   

   山はいくたび雲かげの、     藍のなめくじ角のべて、

   

   おとしけおとしいよいよに、  馬を血馬となしにけり。

   

   

 

 


   注:本文5行目[雲かげ]の[かげ]は、サンズイにツクリは上が[公]下[羽]。