〔燈を紅き町の家より〕

   

   燈を紅き町の家より、      いつはりの電話来れば、

   

   (うみべより売られしその子)  あわたゞし白木のひのき。

   

   

   雪の面に低く霧して、      桑の群影ひくなかを、

   

   あゝ鈍びし二重のマント、    銅版の紙片をおもふ。