〔乾かぬ赤きチョークもて〕

   

   乾かぬ赤きチョークもて、   文を抹して教頭は、

   

   いらかを覆ふ黒雲を、     めがねうつろに息づきぬ。

   

   

   さびしきすさびするゆゑに、  ぬかほの青き善吉ら、

   

   そらの輻射の六月を、     声なく惨と仰ぎたれ。