氷上
月のたはむれ薫(く)ゆるころ、 氷は冴えてをちこちに、 さゞめきしげくなりにけり。
をさけび走る町のこら、 高張白くつらねたる、 明治女塾の舎生たち。
さてはにはかに現はれて、 ひたすらうしろすべりする、 黒き毛剃の庶務課長。
死火山の列雪青く、 よき貴人の死蝋とも、 星の蜘蛛来て網はけり。