四時
時しも岩手軽鉄の、 待合室の古時計、
つまづきながら四時うてば、 助役たばこを吸ひやめぬ。
時しも赭きひのきより、 農学生ら奔せいでて、
雪の紳士のはなづらに、 雪のつぶてをなげにけり。
時しも土手のかなたなる、 郡役所には議員たち、
視察の件を可決して、 はたはたと手をうちにけり。
時しも老いし小使は、 豚にえさかふバケツして、
農学校の窓下を、 足なづみつゝ過ぎしなれ。