〔塀のかなたに嘉莵治かも〕

   

   塀のかなたに嘉莵治かも、     ピアノぽろろと弾きたれば、

   

   一、あかきひのきのさなかより、  春のはむしらをどりいづ。

   二、あかつちいけにかゞまりて、  烏にごりの水のめり。

   

   

   あはれつたなきソプラノは、    ゆふべの雲にうちふるひ、

   

   灰まきびとはひらめきて、     桐のはたけを出できたる。