紀念写真

   

   学生壇を並び立ち、   教授助教授みな座して、

   

   つめたき風の聖餐を、  かしこみ呼ぶと見えにけり。

   

   

   (あな虹立てり降るべしや)

   (さなりかしこはしぐるらし)

    ……あな虹立てり降るべしや……

    ……さなりかしこはしぐるらし……

   

   写真師台を見まはして、   ひとりに面をあげしめぬ。

   

   

   時しもあれやさんとして、  身を顫はする学の(をさ)

   

   雪刷く山の目もあやに、   たゞさんとして身を顫ふ。

   

   

    ……それをののかんそのことの、  ゆゑはにはかに推し得ね、

   

      大礼服にかくばかり、     美しき効果をなさんこと、

   

      いづちの邦の文献か、     よく録しつるものあらん……

   

   

   しかも手練(てなれ)の写真師が、  三秒ひらく大レンズ、

   

   千の瞳のおのおのに、   朝の虹こそ宿りけれ。