廃坑

   

   春ちかけれど(すき)々の、    祠は荒れて天霧し、

   

   事務所飯場もおしなべて、  鳥の宿りとかはりけり。

   

   

   みちをながるゝ雪代に、   銹びしナイフをとりいでつ、

   

   しばし閲してまもりびと、  さびしく水をはねこゆる。