〔けむりは時に丘丘の〕

   

   けむりは時に丘丘の、      栗の赤葉に立ちまどひ、

   あるとき黄なるやどり木は、   ひかりて窓をよぎりけり。

   

   (あはれ土耳古玉(タキス)のそらのいろ、 かしこいづれの天なるや)

   (かしこにあらずこゝならず、  われらはしかく習ふのみ。)

   

   (浮屠らも天を云ひ伝へ、    三十三を数ふなり、

    上の無色にいたりては、    光、思想を食めるのみ。)

   

   そらのひかりのきはみなく、   ひるのたびぢの遠ければ、

   をとめは餓えてすべもなく、   胸なる(たま)をゆさぶりぬ。