巡業隊

   

   霜のまひるのはたごやに、  がらすぞうるむ一瓶の、

   酒の黄なるをわかちつゝ、  そゞろに錫の笛吹ける。

   

   すがれし大豆(まめ)をつみ累げ、  よぼよぼ馬の過ぎ行くや、

   風はのぼりをはためかし、  障子の紙に影刷きぬ。

   

   ひとりかすかに舌打てば、  ひとりは古きらしや鞄、

   黒きカードの面反(おもぞ)りの、   わびしきものをとりいづる。

   

   さらにはげしく舌打ちて、  (をさ)ぞまなこをそらしぬと、

   楽手はさびしだんまりの、  投げの型してまぎらかす。