岩手紀行(3)

 今日はまたあいにくの曇り空です。昨日、どうしても見つからない詩碑が一つあったので、今日の月曜日を待って、 滝沢村役場の商工観光課に電話をしてみたのですが、やはりわかりませんでした。思いきって朝からタクシーで、 それとおぼしきあたりをまわってみましたが、結局わかりませんでした。

 気をとりなおして、こんどは東北本線に乗って、さらに北へ向かいます。目的地は二戸郡一戸町というところで、広い岩手県のなかでも、 ほとんど北の端っこです。
 この一戸町の奥中山高原というところに、町立の「観光天文台」というのがあって、ここに「月夜のでんしんばしら」の碑があるのです。 雨の降りそうな山道を車で登っていくと、どんどん雲の中に入っていくようでした。

 高原には広大なコスモス畑があって、もうすでにコスモスの花が、あちこちで風に揺れていました。

 昨日はと言えば、「つくつく法師」が鳴いているのを今年はじめて聞いたのですが、夏の旅行でせつないのは、 こんなふうに否が応でも秋の訪れを感じさせられる時です。

 さて石碑は、天文台のドームの前に立っていたので、すぐにわかりました。この天文台は小さいけれど、「銀河牧場」と名づけられて、 さながら天空全体を牧野に見立てる趣向のようです。
 一戸町という町は、周辺の二戸市、九戸村、浄法寺町、軽米町と線で結ぶとカシオペア座の「W」の形になるということで、1991年から 「カシオペア連邦」なるものを結成しています。 これはべつだん、賢治にあやかったという 発想でもなさそうなのですが、みんなが自然にこういうロマンチックなことを考える土地柄が、 宮澤賢治を生んだ風土なのでしょうか。

 宿に入ってから高原は、日の暮れとともにますます霧が立ちこめて、あたりは何も見えなくなりました。ふだんでは考えられないほど、 毎日早く寝る習慣がついています。